法務省がヘイトスピーチ対策法の基本的な解釈をまとめ、同法で許されないとした「不当な差別的言動」の具体例を23都道府県の約70自治体に提示したことが4日、同省への取材で分かった。「祖国へ帰れ」などのキーワードを例示。ヘイトスピーチ抑止に取り組む自治体の担当者は「参考になる」と評価している。

 対策法には差別的言動の明確な定義や禁止規定がなく、ヘイトスピーチが多発する川崎市や京都府、大阪市、神戸市、福岡県などが判断基準や具体例を示すよう要望。憲法が保障する表現の自由を尊重する観点から、集会やデモでの公共施設使用を不許可とする判断は難しく、対応に苦慮する各自治体のニーズに法務省が応えた形だ。

 法務省人権擁護局は「ヘイトスピーチは新しい人権問題。具体例を参考に実情を踏まえた対策を取ってほしい」としており、要望があれば他の自治体にも提供する。具体例では「○○人は殺せ」といった脅迫的言動や、ゴキブリなどの昆虫や動物に例える著しい侮辱、「町から出て行け」などの排除をあおる文言が当てはまるとした。

 さらに「○○人は日本を敵視している」などのように、差別的な主張の根拠を示す文言があったとしても、排斥の意図が明確であれば該当すると明示した。

 ヘイトスピーチを事前に規制する施策の策定を目指す川崎市の担当者は「参考にしたい」と話す。全国初の抑止条例がある大阪市の担当者も「具体例が積み重なれば抑止しやすくなる」とした。

 この問題に詳しい神原元弁護士は「法務省が示した具体例は、ヘイトスピーチの本質である『出て行け』といった排除をあおる言葉が差別だと明記している」と指摘。「対策法をより実践的に解釈している点で意義がある」と話している。【共同】

=ズーム=

■ヘイトスピーチ対策法 ヘイトスピーチ対策法 国外出身者らへのヘイトスピーチをなくすため、国や自治体に相談体制の整備や教育、啓発活動を実施するよう求めた法律。差別意識を助長する目的での著しい侮辱などを差別的言動と定義し「許されない」と明記している。憲法で保障する表現の自由を侵害する恐れがあるとして、禁止規定や罰則はない。昨年5月24日に成立し、同6月3日に施行された。

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