日銀の黒田東彦総裁は、現在の大規模な金融緩和をどう終了させるかの「出口戦略」について、考えられるシナリオの公表を検討する意向を明らかにした。今の政策が4年前に始まった時から求められた説明であり、早急に実現してほしい。その際は、金融緩和の手じまいで起き得る負の作用や国民負担を隠さず示してもらいたい。

 安倍政権が任命した黒田総裁は、デフレ脱却へ「2%の物価上昇目標を2年で実現する」として2013年4月、大規模緩和をスタート。世の中へ供給するお金の量を増やせばインフレが起きる、との考えに基づき、そのための大量国債購入に踏み切った。

 資産価格を上げるためとして、株価や不動産価格の押し上げにつながる投資信託の購入を増やしたのもこの時である。

 緩和策により円高が是正されるなど一時は効果が見られたが、物価は目標に届かないまま約束の2年を経過。5年目に入った現在も前年比上昇率はわずか0・3%にとどまっており、「今の政策にインフレを起こす効果はほとんどなかった」との評価が広がっている。

 しかし、その効果の疑わしい政策を4年以上続けた結果、たまったリスクは深刻である。

 国債の買い入れを段階的に増やしてきたため、日銀の保有額は現在約420兆円と発行残高の4割超に。株価や不動産価格に影響する投資信託の購入も増額され、市場価格を恒常的にゆがめる事態となっているからだ。

 それにもかかわらず黒田総裁は物価目標が達成されるまで今の政策を続ける姿勢を崩さず、出口の在り方について語るのは「時期尚早」と繰り返すばかりだった。

 黒田総裁の任期は来年4月までと1年を切っており、このような態度を続けるのは政策の説明責任を果たしていないと言われても仕方なかった。

 ところが黒田総裁はこのほど国会で「(出口が)日銀の財務面に及ぼす影響を含めて、分かりやすく説明していくことは非常に重要だ」と発言を変化させ、出口戦略の公表に前向きな姿勢をにじませた。

 この変化の背景には、自民党の行政改革推進本部が金融緩和の出口に備えた対応を政府へ促したり、会計検査院が購入した国債に損失が出て日銀の財務が傷つく恐れを指摘したりした点があろう。これらを機に黒田総裁が姿勢を改めたのであれば評価したい。

 黒田総裁は同時に、長期金利が1%上がると日銀が保有する国債に23兆円の含み損が発生するとの試算も示した。これは直ちに現実となるわけではないが、出口次第で日銀の信認が揺らぎかねないことを示唆している。日本円の価値にも影響するだけに、あらかじめ十分な説明が求められよう。

 投資信託の購入縮小による影響も気にかかる。日銀による買い入れ金額があまりに大きくなったため、それを減額していく過程では株式市場へマイナス効果が避けられないとみられるからだ。

 米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)はリーマン・ショック後の金融緩和終了に当たり、早い段階から考え方を示し市場関係者に準備を促した。

 日銀がどのような手順で、どのくらいの期間をかけて金融政策を正常化していくのか。市場の混乱を最小限に抑える対話能力が問われる。(共同通信・高橋潤)

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