<病人として生きたくありません。病気という冒険をしている者として、生きたい>。全身の筋肉が衰えていく難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)と9年闘い、55歳で逝った新聞記者で俳人の折笠美秋(おりがさびしゅう)さんが記した闘病日記『死出の衣は』の一節である◆全身不随で人工呼吸器をつけ、わずかに動かせる目と唇の動きを妻が読み取り「命の言葉」を紡いだ。<明日まで、明後日まで…と頑張って、何が待っている?>と書きながらも、治療法が確立される可能性をあきらめない。<ひたすら祈ります。そうした奇蹟(きせき)が起こります事を>◆京都大の研究チームが、ALSの治療につながる候補物質を突き止めたと発表した。iPS細胞やマウスを使った実験で、慢性骨髄性白血病の治療薬が高い効果を示すことが分かったという。すぐ治療に使えるわけではないが、根本的な治療法が見つかってない中で患者や家族には朗報だ◆<何処(どこ)かにゴールがある。私のゴールは治る事。妻や子が恥ずかしいと思う生き方はしない>。折笠さんの強い意志が心を震わす。死と隣り合わせの恐怖。わが身に問いかけても、乗り越える自信などあるはずもない◆多くの患者が病と闘っている。誰でも命には限りがあるが、それを意識するかしないかで「生」の輝きが違う。今を大切に生きることを教えられる。(章)

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