マウスコンピューターの飯山工場で、手作業でパソコンを組み立てる女性従業員=1日、長野県飯山市

山形県米沢市が返礼品にしている高級ブランド牛肉「米沢牛」=1月

 返礼品競争が激しさを増すふるさと納税制度。自治体は寄付獲得のため、アピールに懸命だ。総務省はお金に換えやすい品物を自粛するよう要請したが、地場産業への影響が大きい地域では混乱も。都市部の自治体は、ほかの自治体にふるさと納税をした住民の税金を軽くしなければならず、税収減に反発が強まる。寄付総額の拡大に伴い、さまざまな問題点も浮かび上がってきた。

 ■ネットに出品

 「雇用問題になりかねない」。長野県飯山市に工場を構えるマウスコンピューター(本社東京)の幹部は、足立正則市長に気色ばんだ。

 パソコンはネットオークションなどに出品できる。換金すると、自己負担2000円より多い額が手に入り、事実上の節税になる。このため総務省は2016年4月、商品券、家電製品などを返礼品にしないよう要請。これを受け、飯山市は返礼品にしていたパソコンの入荷を見合わせた。

 マウス社は手作りパソコンに「飯山TRUST(トラスト)」という地域名を冠したブランドを付け、地元の広告塔にもなっている。返礼品採用を機に、パート60人以上を正規雇用に切り替えていた。

 15年度は、市へのふるさと納税による寄付約17億円の7割がパソコン購入に充当された。同社は16年度の発注増加を見込み、部品調達を済ませたばかりだった。

 16年4~9月期の寄付額は前年同期から70%ダウン。足立市長は危機感を募らせ、転売防止シールを貼る対策を講じた上で、パソコンの返礼品を再開することにした。「格安なのに性能がいい。手作りパソコンは人口2万人の飯山市を支える特産品だ」と訴える。

 ■品物は同じ

 寄付額ランキングの上位には肉、魚、ブランド米など魅力的な特産品を贈る自治体が名を連ねる。競争は激しく、順位が入れ替わることもある。

 「返礼品の中身はいつも一緒じゃないか」。西日本の和牛産地の自治体には、こんな苦情めいた声が寄せられた。ふるさと納税を仲介する業者のポータルサイトで大きく取り上げられるよう、宣伝文句を変えていたが、品物は同じ。担当者は「誤解を与えるので更新回数は減らした」という。

 山形県米沢市は、米沢牛の供給が追いつかない。「特産品を新規開拓しないと間に合わない」と職員は焦る。

 「このままだと新年度は30億円の税収が流出する。学校一つをつくるのを諦める金額だ」。東京都世田谷区の保坂展人区長は1月、区民の会合でふるさと納税の弊害を強調した。

 ■防衛に躍起

 ふるさと納税をすると、住んでいる自治体の住民税が差し引かれる。居住している自治体から、寄付先の自治体にお金が移動する仕組みだ。

 世田谷区では15年度、ふるさと納税で約17億円の税金が流出した。保坂区長は、児童養護施設を巣立つ若者への奨学金に使うことを明示し、世田谷区へのふるさと納税を募るなど防衛に躍起だ。

 総務省の要請後も、地場産業とは縁のない家電や貴金属、外国製品まで返礼品に並べる自治体もある。国が返礼品の上限額を設定するなどの対策を求める声の一方、長野県伊那市は「制限を掛けると、豊富な資源のある自治体に寄付が集中する」と問題点を指摘する。

 所管する総務省は「規制は難しい」との立場。幹部は「返礼品がないのが本来の姿なのに、上限額を決めたら『上限までならいい』というおかしな話になる」と話した。【共同】

=表層深層=

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