国連平和維持活動(PKO)で自衛隊を派遣しているアフリカ・南スーダン情勢が切迫している。

 大統領派と、元反政府勢力の副大統領派の間で戦闘が激化。これまでに300人近くが死亡し、中国が派遣したPKO隊員も戦闘に巻き込まれて犠牲になった。

 もはや、大使館でさえ安全ではない。現地駐在の日本大使と大使館員は、陸上自衛隊の宿営地に避難して宿泊する状態が続く。自衛隊の宿営地にも流れ弾が着弾し、現地の隊員たちはヘルメットや防弾チョッキを身につけ、万一の事態に備えているという。

 英国とドイツが派遣隊員9人を退避させたという情報も入ってきた。この国は内戦状態に戻ったと言わざるを得ないだろう。

 南スーダンは2011年に独立したばかりの新しい国だ。国際社会が協力して新たな国造りを支えていかなければならないし、それだけに日本が参加する意義も大きい。自衛隊は350人規模の部隊を派遣し、道路などインフラ整備を進めてきた。

 国際貢献は大いに評価できるが、現状はPKO参加の条件を満たしているだろうか。

 焦点は「PKO参加5原則」をクリアしているかだ。具体的には①紛争当事者間の停戦合意②紛争当事者による日本のPKO参加への同意③中立的立場の厳守④以上のいずれかが満たされなくなった場合の即時撤退⑤武器使用は要員の生命保護など必要最小限が基本-の五つである。

 戦闘が続き、300人が亡くなる現状は停戦状態にほど遠いのは明らかだろう。

 ところが、中谷元・防衛相は、大統領と副大統領が戦闘停止を命じたのを理由に「参加5原則が崩れたとは考えていない」と述べている。戦闘停止命令はポーズに過ぎないのではないか。参加5原則が崩れた以上、ためらわずに即時撤退に踏み切るべきだ。

 中谷防衛相の発言からは、参加5原則をないがしろにしてでも任務を継続させたいという思惑がにじむ。PKO部隊が撤退すれば、現地の治安がさらに悪化するというのが最大の理由だが、もうひとつの狙いがあるようだ。昨年成立させた「安保法制」で認められた「駆け付け警護」を新たな任務として付け加え、実績を残したいのだろう。

 だが、自衛隊員の生命を危険にさらしてまで、政治的な実績作りを優先すべきではない。

 今回、現地から国際協力機構(JICA)の職員を避難させるに当たり、政府は自衛隊による陸上輸送を検討したが、結局実現しなかった。職員らはレンタカーで空港へ移動し、チャーター機で隣国へと逃れたという。

 自衛隊が邦人輸送を見送ったのは、国連の現地司令部が各国部隊に対して、宿営地の外に出ないよう禁じたからだ。

 そもそも、現地派遣部隊は、インフラ整備を担う施設部隊であり、戦闘や邦人輸送は想定していない。政府は11月に派遣する次の部隊から駆け付け警護を任務に加えるつもりのようだが、このまま撤退を引き延ばせば、自衛隊が戦闘に巻き込まれるのではないか。

 政府は内戦状態を率直に認め、参加5原則に立ち返って自衛隊員の安全確保を最優先にすべきだ。(古賀史生)

このエントリーをはてなブックマークに追加