二十四節気の大暑をすぎた。刺すような陽(ひ)の光と、まとわりつく暑さだが、子どもたちは元気だ。セミの声にまじり近所から聞こえてくるのは「ラジオ体操」のメロディーである。広場に集まり、「イチ、ニ、サン」とやっている◆日本での体操の始まりをひもとくと、幕末までさかのぼる。西洋式軍隊をつくる目的で幕府が招いたフランス軍事顧問団に学んだ。時は明治に移り富国強兵を掲げた政策のなかで、国民の体力向上は大きな課題であり続けた。後にドイツ、スウェーデンの体操先進国から移入され、学校教育にも取り入れられる◆ただ、号令のもとに負荷をかけるきつい鍛錬的な運動が含まれ、静止時間が長いこともあって面白みがないと不評だった(佐々木浩雄著『体操の日本近代』)。そこに登場したのが国民保健体操(ラジオ体操)である。逓(てい)信省簡易保険局が呼び掛け、1928(昭和3)年に始まった◆ピアノのリズムに合わせ、何しろ軽やかである。ラジオの普及とともに瞬く間に広がり、昭和8年時点で7割近くの小学校で行ったと調査にある。歴史に詳しい半藤一利さん(86)も、最初のラジオ放送の記憶はラジオ体操だったと『B面昭和史』に書いている◆今、子どもたちが体操をしている光景は平和そのもの。夏休みを健やかに、安全に過ごしてくれればと願う。(章)

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