国の新規制基準に合格した玄海原発3号機(手前)と4号機=東松浦郡玄海町

■蒸気ベントも設置に猶予 識者「事故は待ってくれない」

 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)は1月、東京電力福島第1原発事故を踏まえて策定された国の新規制基準に合格した。新たな基準は重大事故の発生防止と、事故発生を想定した対策を要求しているのが特徴。原子力規制委員会は「世界で最も厳しい水準」とする一方、「安全性の追求に終わりはない」という姿勢を強調する。

 新規制基準に対応するため、九電は基準地震動を最大加速度620ガルに引き上げ、取水ピット前面の最大津波は6メートルと想定、火山や竜巻など自然現象を考慮して設計基準を強化した。

 さらに重大事故の発生を想定し、「(原子炉を)止める」「冷やす」「(放射性物質を)閉じ込める」との考えで対策を取る。電源供給や冷却手段を多様化、水素爆発を防止するために格納容器内の水素濃度を下げる2種類の装置を取り付けた。万が一、放射性物質が放出した場合に拡散を抑えるため、放水砲や海への拡散を防ぐシルトフェンス(水中カーテン)を備える。

 新規制基準は、重大事故時に放出される放射性物質の量に関して、原発1基につきセシウム137換算で、福島原発事故の100分の1程度となる100テラベクレル(テラは1兆)を下回ることを要求している。玄海原発の場合、福島の2千分の1の4・5テラベクレルに抑えられることが確認されたとしている。

 ただ、佐賀、福岡、長崎の3県で2~3月に開かれた住民説明会では、原子力規制庁や九電の担当者の説明に、住民からは安全性を不安視する声が相次いだ。

 「100テラベクレル以下の事故とはどんな事故か」という質問に、規制庁の担当者が数字の根拠や具体的な健康影響をその場で示せず、怒号が飛び交う会場も。対策の現実性を疑問視する意見もあった。

 九州大大学院の吉岡斉教授は、規制委の安全目標は実証的根拠がなく、「100テラベクレルという数字は、かつての『格納容器は絶対に破れない』という作り話を少々緩めただけのもの」と厳しく指摘する。

 安全対策には課題も残る。放射性物質を減らして格納容器内の蒸気を排出するフィルター付きベントは、特定重大事故対策として5年間の猶予期間がある。九電は設置を検討中だが、規制庁は説明会で「(加圧水型の)玄海原発の格納容器は(沸騰水型の)福島に比べて圧倒的に大きく、圧力や温度が上がりにくい。玄海は、圧力を下げる仕組みはベントに頼っていない」との認識を示した。

 重大事故時の指揮拠点となる代替緊急時対策所は、100人が1週間対応できる。新基準に適合しているものの、十分な休憩スペースがなく、非常時は過酷な環境となる。九電は当初計画した免震重要棟に代わり、地上2階、地下2階建てで耐震構造の緊急時対策棟を建設する。完成時期に関し「再稼働後に改めて工事計画を提出するので数年を要する」と説明した。

 猶予期間があることについて、大学非常勤講師で元原発設計技師の後藤政志氏は「あたかも事故は5年間は待ってくれるという新たな安全神話以外の何物でもない」と批判する。

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