2017年版九州経済白書が公表された。テーマは「人材枯渇時代を生き抜く地域戦略」。アベノミクスで景気の回復基調が続く一方、九州・沖縄、山口の企業のうち8割弱が人材確保を経営課題と認識しており、その打開策を探ろうというものだ。人口減少社会に突入する中、いま必要なのは大胆な発想転換だろう。働き方改革を通じ、多様な人材活用を進める契機にしたい。

 白書は公益財団法人九州経済調査協会がまとめ、今回で50回目。時代を見据えたテーマを毎年掲げており、近年の人材不足については「景気要因よりも高齢化、少子化による人口減といった構造変化の影響が大きい」と分析する。人材不足が慢性化し、その争奪戦がより激しくなる状況を人材枯渇時代と呼び、早急な対応の必要性を訴えている。

 企業が本来、最優先で取り組みたいのは次代を担う若手世代の確保だろう。ただ、佐賀県をみても高校生の県外就職率は4割を超え、10代から30代まで転出者が転入者を上回っている現実がある。こうした状況を改善しようと企業、自治体が高校や大学と連携して学生の地元定着を目指す取り組みを強化しているが、いわば大都市圏との“綱引き”であり、簡単にいかないのも事実である。

 それでは、足りない労働力を補い、地域経済の勢いを持続するためには何が必要なのか。白書はこれまで労働市場への参画が限定的だった女性や高齢者、外国人といった人材が活躍できる基盤づくりを急ぐことを提言する。

 例えば女性に関しては就業意向を持ちながら育児などで未就業の女性が九州・沖縄、山口に82万4千人おり、こうした人たちが求職に向かえば就業者が67万9千人増える-と試算する。ただ、そのためにはこれまで一律かつ固定的だった働き方を多様で柔軟にし、勤務時間などのミスマッチの問題を解決することが不可欠と訴える。

 先進事例として、ワークシェアリングの手法で育児期の女性技術者の負担を軽減している北九州市の建築設計事務所や、残業ゼロ・有給休暇100%消化を掲げ、確実に実践している福岡市の建設資材レンタル会社を掲載。福岡県70歳現役応援センターの取り組みや、外国人留学生に地元企業の求人情報を提供する就職支援サイトなども紹介している。

 このほか、限られた人材で高い生産性を上げるための事業戦略にも注目。佐賀県内からは小型無人機「ドローン」を測量作業の効率化や橋の点検などに活用している富士建(佐賀市)、米国IBM社の人工知能(AI)を使った社内問い合わせシステムを開発した木村情報技術(同)などをピックアップしている。

 白書は、日本が成し遂げてきた経済成長は人口増加という追い風に支えられてきた面があると強調。人材枯渇時代の成長戦略を考える上で、これまでの成功体験の延長では通用しないことをシビアに受け止めることが第一歩になると説く。いわば戦後70年以上継続してきた雇用や働き方の大改革を迫るものであり、経営者や従業員、人材を輩出する学校にも大きな痛みや変化が求められるという。九州は全国に先んじて人口減が進んでおり、より厳しい体質改善が必要となる。(杉原孝幸)

このエントリーをはてなブックマークに追加