早津昌俊さんのログハウスに集まり、太良ミカンの今後について意見を交わす太良シトラス会のメンバーたち

太良シトラス会のメンバー(後方)と、太良町のミカン栽培の現状を学びに訪れた大学生たち=2015年10月、太良町大浦

■若者の発想で活性化

 ミカン好きの東大生らでつくる「東大みかん愛好会」やお茶の水女子大のサークル、有田工業高の生徒-。太良町内で6月に開かれた会議には、県内外から参加した多くの若者の姿があり、町の特産品であるミカンをどうやってPRしていくか活発に議論を交わした。

 町内のミカン農家らでつくるグループ「太良シトラス会」を中心とした産地振興の取り組み。柔軟な発想を持った若い世代と思いを共有しながら、町の潜在力を発揮させようとしている。

 有明海を望み、多良岳山系の裾野が広がる太良町。温暖な潮風を受け、ミカン栽培の好適地とされた。転機は1964年に始まった「国営多良岳パイロット事業」。同年に500ヘクタールだった町内のミカン畑は、5年後には約1200ヘクタールまで広がった。出荷時期が早い極早生ミカンが主力だったが、需要の変化とともに価格は下落。栽培面積は減り、生産者の高齢化が進んでいる。

 「日本一のミカン」を目指そうと、約30年前に立ち上がったシトラス会。自費で専門家を招いた勉強会やイベントを開いていたが、近年は目立った活動はなかった。危機感を抱きながらも「何から手を付ければいいのか分からなかった」と現会長の早津昌俊さん(46)は振り返る。

 そうした中、太良町出身で元瀬戸内市副市長の桑原真琴さん(48)との交流がきっかけとなり、豊富な人脈や経験を持つ桑原さんのバックアップで昨年から動き出した。夏はフェリス女学院大(横浜市)の女子学生、秋には東大みかん愛好会や佐賀大生を招いて町内を案内し、活性化のヒントを探った。

 本年度からは活動を本格化させ、3カ年にわたってアイデアを具体的な形にしていく。学生や生徒らは太良ミカンのロゴマーク募集や、ミカン箱のデザイン制作、ミカンを使った商品開発に取り組む。8月は学生らを集めた夏合宿をする。

 課題は活動資金。「さが創生」を掲げる県の事業をうまく活用し、学生が来町する交通費などを捻出している。

 地域住民が自ら行動を起こす「自発」のモデルとして、シトラス会に注目する県は、本年度から「地域づくりスタートアップ支援事業」を始めており、その第1号としてシトラス会の活動に3年間で500万円を出す。県さが創生推進課の担当者は「都市部としっかりつながっている珍しいケース。ほかの市町にもいい影響が連鎖していけば」と広がりに期待する。

 産業振興の効果はすぐには出ないが、有形無形の影響がある。妻のふるさとの太良町に移住し、3年前からアスパラ農家をしている安東浩太郎さん(37)=北九州市出身=は、2カ月前にシトラス会に加わった。「新規参入者で知り合いが少ない中、交友関係が広がった」と話す。

 学生にもメリットは大きい。東大みかん愛好会の一人で東大農学部3年の藤瀬雅也さん(20)=佐賀市出身=は、農業経営コンサルタントを目指す。「うわべの知識だけでなく、農家の実態を深く知ることができた。太良は第二のふるさと。産地としての知名度が上がれば評価も上がる。生産者の収入アップにつなげたい」と意欲を語る。

 シトラス会には、商工業者や町職員などさまざまな人も協力。「皆さんに気に掛けてもらっている。『負けてられんね』と町内からもっといろいろな活動が出てくれば」と早津さん。日本一を目指した往時の活気が、町に再び芽生え始めている。

=わがまち未来形 太良=

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