「マセラティ」はイタリア生まれのスポーツカーだ。スタイリングは優美。流れる血はレーシングカーである◆この車に惚れて免許とりたてで買ったのが、唐津市出身の作家北方謙三さん。アクセルを踏み込んだ時の加速感は突き抜けるが、若葉マーク付きというのがご愛嬌だ。筆者が東京勤務の頃、取材先のホテルまで別荘から愛車のマセラティで駆けてきたと聞き、ハードボイルドの風にしびれたことを思い出す◆ただの移動手段としてではなく、純粋に運転そのものを楽しめるのがスポーツカーだろう。つまり遊び心である。そこに光が当たり、今、販売が伸びているという。燃費や値ごろ感を重視し、売れる車を優先してきた結果、若者は車から離れていった◆そこで、メーカーはワクワクドキドキする車の開発に力を入れ始めた。高い買い物だからこそ夢があり憧れが持てる。手に入れた時の満足感は計り知れない。将来、自動運転が普及すると、車はどれを選んでも大差ない単なる道具になってしまう。付加価値が減ることへのメーカーの危機感は強い◆当方、乗ってきた車は全てマニュアル車にこだわってきた。肩身は狭いが、ギアを入れる時の「カチッ」という感触にひかれる。走りを極めた北方さんには遠く及ばないが、スポーツカー人気を支えるシニアたちの気分は分かる。(章)

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