看護師や介護福祉士など専門職を配置して預かる子どもの介助をする施設職員。人件費がかかるため「運営はぎりぎりだ」と話す=小城市の放課後等デイサービス「いーはとーぶ」

◆指導員、資格要件なく 迎え忘れや一時不明も

 障害児の学童保育とも呼ばれる「放課後等デイサービス」に異業種参入が相次いで急増し、孤立しがちな親子の支援になっている一方、「質」の確保が課題になっている。指導員に資格要件がないこともあって一部で障害者への理解不足のままサービスが提供され、「迎えに来るのを忘れられた」「預けた子どもが一時行方不明になった」といった問題も起きている。国や自治体が運営条件の厳格化や指導強化に乗り出す動きも出てきた。放課後デイの現状を探った。

 2年前の1月。午後2時ごろ、12人の利用者を連れて佐賀市の森林公園を散歩していた放課後デイ事業所が、利用者の蛯名晃大さん(当時16歳)を見失った。母親の留美さん(同50歳)の携帯電話が鳴ったのは、それから1時間半後。「一人でどこかに行ってしまう癖があり、目を離さないよう伝えていたのに」

▽4年余で3倍超に

 午後9時すぎ、警察から保護したと連絡が入った。留美さんは「ほっとしたと同時に、目を離した事業所への怒りが湧いてきた」と言い、事業所を替えた。

 放課後デイは学童保育を利用しづらい子どもの居場所として2012年度に制度化された。利用料は保護者が原則1割負担、残りは公費で賄われる。社会福祉法人や医療法人以外の民間も運営できることから参加事業所が急伸、県内も4年余りで3倍超の71事業所(16年8月現在)に増えた。利用者の選択肢は広がる一方、中には「質」を問われる事業所も潜む。

 佐賀市内のある施設に自閉症の長男を預けていた母親(53)は「勝手にお菓子を買い与えられていた」と話す。「息子の自立にもよくない」とお菓子を与えないよう訴えたが、「本人が喜んでいる」と取り合ってもらえなかった。

 問題が起きる要因の一つに、国が定める人員配置基準がある。子どもに接する指導員に資格要件がなく、この母親も「障害者への知識が十分あるようではなかった。何も知らない人が指導員になれる制度はおかしい」と憤る。

▽保護者ニーズ高く

 「ただ預かるだけの施設になっていないか」と指摘するのは、佐賀市でバリアフリー美容室を運営するNPO法人セルフの安永康子理事長。放課後デイには障害児を集団生活に慣れさせたり、自立を促したりする「療育」という役割があり、自閉症と知的障害がある子を育てた経験からその重要性を訴える。

 「受け皿があることで気持ちが楽になる」「きょうだいの学校行事に行けるようになった」「なくなると働けなくなる」と保護者のニーズは高い。安永さんは「母親の息抜きや社会復帰のためにも必要なサービス」とした上で、「学齢期の放課後を施設で毎日過ごせば、その後の人格形成に大きく影響する。親は『施設内でどんな過ごし方をしているか』という意識を持って」と呼び掛ける。

 看護師ら専門職を配置して重度心身障害児も預かる「いーはとーぶ」(小城市三日月町)。大野真如代表理事は「障害児と保護者が地域で生きていける社会にしたいと思ってやってきた。一部の問題がある事業所と一緒にされると困る」と語り、事業所同士が連携し業界全体で質向上に取り組む必要性を強調する。

■識者談話  行政のチェック必要

 西九州大社会福祉学科長の滝口真教授

 「放課後等デイサービス」という同じ看板を掲げながら、事業所ごとのレベルに大きな差がある。行政が定期的にチェックし、頑張っている施設をきちんと評価するなど、サービスの質へ関与する必要がある。

 看護師や保育士など有資格者をそろえる真面目な事業所ほど、人件費がかさんで運営が赤字化している問題や、施設職員が障害児について学ぶ研修の場も少なく、まだまだ制度に矛盾や問題がある。

 障害児の介助は主に母親が担っているが、介助に疲れた母親が体や精神を病んでしまうと、障害児も共倒れしてしまう。それを防ぐためにも、放課後デイはなくてはならない。線引きは難しいが、ひとくくりに規制するのではなく、質のいい施設を守り、悪質な施設がなくなるような仕組みが重要だ。

=現場を行く=

■訂正 8日付25面の放課後等デイサービスの記事で、小城市三日月町の「いーはとーぶ」の代表理事は大野真如さんでした。

このエントリーをはてなブックマークに追加