池田学「記憶」(2002年、紙にペン、インク、25.5×47センチ、個人蔵、(c)IKEDA Manabu Courtesy Mizuma Art Gallery)

 ペン1本で無数の物語を紡ぎ、壮大な世界を描き出す多久市出身の画家、池田学さん。佐賀県立美術館で開催中の展覧会「The Pen-凝縮の宇宙-」に展示されている「記憶」という作品には、池田さんの多久で過ごした少年時代の思い出が詰まっています。

 多久市岸川地区の風景がモチーフとなったこの作品には、森の中、曲がりくねった道路を軽トラックが走り、作業する人や積み上げられた材木、杉林、イノシシやウサギ、鳥たちのほか、不思議な動植物が描かれています。画面中央には暗闇がぽっかりと開いており、奥に続く空間を思わせます。

 池田さんは幼いころ、家族で岸川に釣りに出かけていたそうです。今出川の上流にある岸川は美しい山並みに囲まれ、初夏には蛍が舞い、四季折々の風情が訪れる人々を楽しませています。

 池田さんは、幼いころの魚釣りや虫取りが自らの創作の原点と語っておられ、この作品はまさに原点の「記憶」といえます。

 画面右下には釣りをする少年と、その姿を見つめる犬が描かれており、池田さんご自身を思わせます。ぜひ会場にて探してみてください。

志佐 喜栄(多久市郷土資料館)

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