試写会後、主要キャストや大林宣彦監督と記念撮影する地元エキストラ。映画には延べ2000人のエキストラと900人のボランティアが関わった=唐津市南城内の大手口センタービル

■くんち描き戦争問う

 唐津市で昨年撮影された映画「花筐(はなかたみ)」が完成した。撮影に深く関わったエキストラやボランティアなど関係者約300人を招いた試写会が3、4日に開かれた。日米開戦直前、戦時下の青春群像劇で、大林宣彦監督(79)による新しい唐津の物語の全貌が明らかになった。地元先行上映を今年12月上旬に予定している。

 試写会での観客の反応を問われ、大林監督は「どう捉えればいいのか、戸惑われていると思います」と見る側を推し量った。「1回で見て分かる映画は情報。10回でようやく映画の正体が見えてくるのは、考えた末に見えてくるということ。ただ魅力がないと10回は見ない。そういう魅力だけはつくったつもりです」と自信を見せた。

 原作は檀一雄(1912-76年)が1937年に発表した同名の短編小説。冒頭に「その町は先(ま)ず架空の町であってもよい」とあるが、40年前に映画化を試みようとした大林監督に、檀が「唐津に行ってごらんなさい」と助言。原作の景色は見当たらず、2004年にくんちを初めて見て、その答えを探し出した。

 町人の祭りであるくんちの精神性を描くことで、生きることや戦争についての普遍的な問いが浮かぶ。すべて地元ロケでありながら、描かれているのは実在する唐津とは違う。大林監督は「虚構というのは、より過剰に描き出すことができる。事実じゃないけど誠が見える。それが映画の良さ」とも話した。

 主要キャストのうち3人が試写会に出席した。「唐津浜大学予科」に海外から転入し、物語の語り部でもある榊山俊彦役の窪塚俊介さん、美少年の友人で鵜飼役の満島真之介さん、結核に苦しむヒロインの江馬美那役の矢作穂香さんがあいさつ。満島さんが「公開されるまで、一人でも多くの方に見てもらえるように俳優陣は宣伝活動をします。皆さん、力を合わせましょう」と呼び掛けた。

 12月上旬に市内各所のホールを会場に唐津で先行上映会を開催予定で、同月中旬から東京・有楽町スバル座などで全国上映される。

 寄付の報告もあり、映画製作費に必要な1億円を上回る1億203万円が集まった。内訳はふるさと寄付金8928万円、直接寄付1219万円など。唐津映画製作推進委員会の甲斐田晴子事務局長(35)は「映画はできるまでが半分で、見てもらって初めて完成する。とにかく皆さんに見てもらいたい」と語る。

 ほかの主要キャストは長塚圭史さん、柄本時生さん、山崎紘菜さん、門脇麦さん、常盤貴子さん。

<参加者の感想>

■馬渡島出身の吉良(長塚圭史さん)の下宿先としてロケで使われた水野旅館のおかみ立花史子さん(58)

「屈折した思い伝わる」

 あの時代の若者の屈折した思いが伝わってきて、今までとは違う視点から戦争というものを考えました。答えは出なくても、きっと何回も見るでしょう。映像は幻想的で、音も迫力があって、若い役者の皆さんがきらきらしていて。撮影中は音が入らないよう、いけすを止めたこともありました。撮影の苦労を目の当たりにしてきただけにじーんとくるものがありました。

■大林監督の熱意に応え、曳山14台の撮影に全面的に協力した唐津曳山取締会の大塚康泰総取締(73)

「曳山が命の象徴に」

 大東亜戦争が始まるまでの重苦しい雰囲気の中での若者たちの悩みなり、恋愛なりが描かれ、その中で命の象徴として曳山が出てくるシーンがたくさん。監督の意図がよく伝わりました。考えさせるとともに、1度だけじゃ分からない。これは2度、3度と見る映画だと思いましたね。私は兄を結核で亡くしていて、ヒロインが血を吐くシーンが強烈だったですな。

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