高橋書店が販売中の10年連用日記で、数年先の元号が表記されたページ=東京都文京区の「高橋書店」

 天皇陛下の退位時期はいつで、新たな「元号」はどういう形で公にされるのか-。「昭和」から「平成」に改まって29年目。新元号の制定で影響を受ける業界の人たちが気をもみ、退位を巡る議論の行方を見守っている。

 「(昨年8月の)陛下のビデオメッセージを見た時は、今年の手帳の製作に影響が出るのではとヒヤッとした」。手帳販売大手「高橋書店」(東京)開発部の宮越梓さんは打ち明ける。例年、新年用の手帳や日記帳が店頭に並ぶのは9月。製作は同じ年の1月から始めるため、新元号はこの時期に発表されなければ、支障が出るからだ。

 12月23日の天皇誕生日の名称変更や、今後3~10年分が書き込める手帳や日記帳の印刷にも対応する必要がある。新天皇即位の半年から数カ月前程度に新元号を発表するとの情報もあるが、宮越さんは「半年前では間に合わない。できるだけ早く発表してほしい」と望んでいる。

 赤ちゃんの命名にも影響しそうだ。赤ちゃんの名前の年別ランキングを発表している明治安田生命(東京)によると、「明治」から「大正」への改元(1912年)後、男の子で大正元年は「正一」君、同2年は「正二」君が1位。女の子も同2年に「正子」ちゃんがトップだった。

 「昭和」への改元時(26年)は、男の子で昭和2年に「昭二」君、同3年は「昭三」君が1位。女の子も「昭子」ちゃんや「和子」ちゃんが圧倒的に人気で、命名の流行は新元号になるたびに大きく変化してきた。

 同社広報部の田中翔さんは「近年は、見た目のインパクトや音の響きを重視する傾向がある。新元号に使われる漢字の意味や読みの響き次第で名前に使われる可能性が高い」と推測する。

 コンピューターの誤作動や停止が懸念された「西暦2000年問題」に直面したIT業界。大手ソフト会社などが加盟する「情報サービス産業協会」(東京)によると、企業や公的機関の多くは西暦変換で元号を表記できるようシステムを改修した。同協会の担当者は「新元号が突然発表されてもプログラミングを更新するのに短時間で対応できる。現時点で大きな混乱は想定していない」と冷静だ。

 元号表記の運転免許証。「昭和」から「平成」の改元(89年)は突然だったため、システムを変更するまで昭和のまま発行した。警察庁の担当者は「新元号表記ができるようになっても更新時期を迎えるまでそのまま使ってもらう。周知のため広報対応は検討している」と話している。【共同】

=ズーム=

 ■改元 元号を改めること。元号は、古代中国で皇帝が時間も支配するものとして成立した。日本では7世紀半ばに「大化」の元号が初めて使われた。天皇一代に一元号という形は明治時代に始まった。1979年制定の元号法は「皇位の継承があった場合に限り改める」と規定、退位が実現すれば変更される。「平成」は元号法に基づき内閣が決めた初の元号で、大化以来247番目。(1)漢字2字(2)書きやすく、読みやすい(3)過去に使われたものでない-が基準となった。過去の元号は中国の古典などに由来している。

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