モロッコで見つかった30万年前の現生人類の下あごの骨(Jean―Jacques Hublin/MPI EVA Leipzig提供)

■30万年前、国際チームが科学誌で発表 

 これまでで最古となる30万年前の現生人類の化石を北アフリカのモロッコで発見したと、ドイツなどの国際チームが8日付の英科学誌ネイチャーに発表した。従来の年代を10万年近くさかのぼり、考えられていたより早い時期にアフリカで現生人類が進化したことを示す証拠だとしている。

 化石から復元した頭蓋骨は顔立ちが現代人に似ている一方、脳を収める頭部の形状に、ネアンデルタール人に似た原始的な特徴が残っていた。チームは「アフリカ大陸での石器文化の広がりと相まって初期の現生人類が進化した」とみている。

 ドイツのマックスプランク進化人類学研究所とモロッコの国立研究所のチームは、2004年からモロッコ西部のジェベル・イルード遺跡を調査し、5人の頭やあごの骨を発掘。石器も含めて分析し、35万~28万年前のものだと結論付けた。

 現生人類ではエチオピアで出土した20万年前の化石がこれまで最古。南アフリカでは現生人類の可能性がある26万年前の頭蓋骨片が出ている。

 ただどの化石を現生人類に含めるかや、年代測定の信頼性などを巡って専門家に異なる意見もあり、議論を呼びそうだ。

 チームはモロッコの化石の立体データから頭蓋骨を復元して分析。脳を収める領域は前後に長く、初期人類の特徴が残っていた。エチオピアや南アフリカの化石も似た特徴があり、同種の石器が一緒に出土していることから、30万~20万年前にはアフリカ各地で現生人類が暮らしていたとみている。

 どのようにアフリカ各地に広がったかは不明だ。チームはその後の脳の進化が現代人につながる知性を生み出したとみている。

 遺跡ではガゼルなど動物の骨が出土し、狩りをして火を使った痕跡も見つかった。【共同】

〈解説〉脳の進化解明に注目

 モロッコで見つかった現生人類の化石は、私たちの祖先が「人類のゆりかご」と呼ばれるアフリカで、どのように進化したかを知る手がかりとなる。今後は脳の進化過程の解明が鍵を握りそうだ。

 現生人類がネアンデルタール人との共通祖先から分かれたのは、DNA解析などから50万年より前とみられる。今回見つかった30万年前の化石は証拠のギャップを埋めるものだ。

 コンピューター断層撮影(CT)で復元した頭蓋骨は興味深い。顔立ちは細長く現代人と似ているが、大脳を収める領域は前後に長くて上下に平たく、ネアンデルタール人と似た特徴を持つ。脳の発達が次のステップとなった可能性が高い。

 ただ新旧の特徴がモザイク状になった化石を、現生人類に含めるべきかどうかに疑問を示す専門家もいる。30万~20万年前にアフリカ各地に広がった現生人類がどこで誕生したかという謎も未解明だ。今回の研究チームは、新たな化石の発見や年代測定による証拠を積み重ねることで、答えが明らかになるとみている。

 ■現生人類 ホモ・サピエンス(新人)と呼ばれる人類のグループ。10万~6万年ほど前に住んでいたアフリカを出たとされ、世界に拡散して私たちの直接の祖先となった。これとは別のグループに、欧州に進出した旧人のネアンデルタール人もいたが絶滅した。ただ最近の遺伝子研究で、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人との間で交配があり、人類の進化は一本道ではなかったことが判明している。

 

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