協定書を手にする橋本康志市長(左)と久米勝士・協会けんぽ佐賀支部長=1月11日、鳥栖市役所

 自治体と大学、研究機関、民間企業などが地域の課題解決や活性化について、包括的に連携して取り組む包括連携協定を結ぶ動きが全国的に広がっている。地方創生が叫ばれる中、鳥栖市でも協定締結が相次いでおり、新たな地域振興策として期待も高い。

 鳥栖市は2011年、佐賀大学と医療や福祉、教育などの分野で初めて包括的な協定を結んでいるが、本年度に入って新たに四つの協定を締結した。中小企業の従業員らが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)佐賀支部、地元の九州龍谷短大、市内に支店を置く7金融機関、そして市内に三つある最先端の専門機関である。分野を限定したこれまでの協定に比べて、大きな枠組みで手を組むのが包括連携の特徴とされる。行政と組むことでイメージアップ効果を狙えるメリットもある。

 けんぽ協会との協定では市民の健康増進を図り、医療費抑制につなげるのが目的だ。市は自営業者らが加入する国民健康保険と後期高齢者医療保険(75歳以上)を通じて市人口7万3千人の30%の医療情報を把握しているが、協会けんぽと提携することで人口の48%の健診結果データを共有できる。これを分析して年齢や地域特性に応じた効果的な指導・相談に役立てる方針だ。

 市の国保加入者の健診受診率は15年度37%で、県平均46%、全国平均45%を大きく下回っている。受診率アップには受診呼び掛けの強化や受診機会の増加などを図る必要があり、市と協会けんぽは連携事業の第1弾として3月5日に大型商業施設フレスポ鳥栖で本年度の未受診者を対象に合同で健診を行うことを決めた。

 こうした動きに合わせて、佐賀東信用組合は健診を受けた人に金利を上乗せする定期預金を始めている。市と市内の金融機関が協定を結んだことによる取り組みの一つで、「健康長寿」をキーワードに連携と商機が広がった一例である。

 この他、九州龍谷短大との協定では幅広い交流を通して人材を地元に引き留めたい狙いがある。基礎的研究から事業化までを支援している産業技術総合研究所九州センターや九州シンクロトロン光研究センター、九州国際重粒子線がん治療センターとの協定では新しい技術や治療法の開発に発展する可能性があると注目されている。

 協定は縦割りになりがちなそれぞれの取り組みを横断的につなぎ、地域の課題を解決できるとの期待がある。ただ、緩やかな協力を規定しているため双方の負担やリスクが発生しにくく、具体的な成果に結びつけづらいという指摘もある。包括的な連携をどうすれば地域発展につなげ相互のメリットも最大化できるか、ぜひ模索してほしい。(高井誠)

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